温暖化についてのIPCCの新しい報告に思う

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 元旦の絵のつづきです。


 今朝の新聞で、IPCCの作業部会が承認した第4次評価報告の内容が、報じられています。これま

で専門家が入手したデータからは、いま温暖化が進行している、今後も温暖化傾向が続く、と判断するし

かない(確かなこと)。温暖化が人間活動の結果だという判断には、10%ほどの不確かさが残る、とい

うことのようです。以下はわたしの感想です。


 地球史の過去には、太陽活動、小天体の来襲、地軸の傾きの変化などの天体物理が原因で、あるいはシ

アノバクテリアの大増殖のような生物的な原因で、生物種の大絶滅がおき、その後新しい種が進化する環

境の大変動が何回かあったことが、いまではわかっています。今回の温暖化は、それらに比べればはるか

に小さな変動です。

 恐竜が全盛だったころにいまより10度ほど高温な時期があり、その後小天体の衝突による急速な寒冷

化があって、寒冷期を乗り越えた哺乳類が繁栄することになった、というのが、最近わたしたちが専門家

からよく聞く説明です。ヒトが循環型社会への転換に失敗したとき、今世紀末の気温上昇は2.4から

6.4度と、今回報告されていますから、最悪でも白亜紀と現在の気温差よりは小さい変動です。それな

ら、種の交代は促進されるでしょうが、生物全体の大絶滅には至りません。

 地球史的な視点からは、荒らぶる地球に比べれば、ヒトのなす悪業は何ほどのもの、ということです。

「ヒトが地球に壊滅的な打撃を与えようとしている」みたいな論調を目にしたら、眉につばをつけたほう

がいいと思います。現在の温暖化傾向は、「地球」や「地球上の生物全体」の問題というより、ヒト文明

の将来に関わる問題です。


 ここ1万余年の「例外的に温和な」気候に適応した文明を発達させて、64億人にまで増殖したヒトの

社会が、予想される気候変動で受ける打撃。気温上昇が2度未満に抑えられたときと5度以上になったと

きでは、打撃の程度が劇的にちがうようです。変動が人為起源である可能性には10%の不確かさがあり

ます。逆に言えば、ヒトの努力で2度未満に抑えられる確率が90%はあるということです。この90%

に賭けて努力する一方で、程度の差はあっても温暖化は確定している事実とされているのですから、その

悪影響を緩和させる計画にも力を注がなくては。グローバルな経済格差が、ヒト全体の共同行動の妨げに

なっています。格差是正も温暖化対策の一部です。

 「観測史上初」となる、あるいは数十年に一度の、大規模な気象災害の頻発。地域によって、旱魃、洪

水、高潮、海岸低地の水没、水不足、食糧減産、熱帯性病原体の北上など、災害の種類は多様です。しか

も過去の経験からの類推は難しいでしょう。役人や専門家は、確定した計画で行動するときは有能です

が、予想外の突発事態では、住民の自発的な判断、意思統一、共同行動が、被害規模に大きく影響するで

しょうね。そういうことを考慮に入れた防災計画でなくては。冷静で理性的な温暖化対策には、世界や各

国内の、人と人の関係を変えるきっかけになる可能性もある、そんな気がします。