アメリカ人が書いた日本史

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 1月10日の美幌郊外で撮りました。除雪車が道路の雪を撥ね、飛行機が女満別空港に着陸態勢に入っ

ています。3枚目はその飛行機です。


 岡目八目ということわざをわたしは、碁を打っている人より周りで見ている人の方が8目先まで読め

る、すなわち、当事者より客観的な観察者のほうがよく見えることがある、という意味で理解していま

す。アメリカの歴史学者が書いた『日本の200年』上下(みすず書房)という本を読んでいて、このこと

わざを思い出しました。

 著者はアンドルー・ゴードン、訳は森谷文昭。徳川末期から昭和までの日本の近・現代史です。日本人

の書いた日本史は何種類か読んだことがあり、小説でもなじみがありますから、自分なりにわかっている

つもりのところがありました。だけど、アメリカの学者が素人のアメリカ人のために英語で書いたこの本

を翻訳で読みはじめて、違和感もありましたが、自分のなかにいつの間にか刷り込まれた先入観もあるこ

とに気づかされました。

 違和感は例えば、逃散、百姓一揆(強訴、打ちこわし)などを、農民の「抗議行動」という言葉で説明し

ているところです。原文ではprotestなのでしょうか、それともregistance ? protestでは弱すぎ、

registanceでは泥臭さが抜けてしまうような。考えてみれば、日本人には打ちこわしや一揆という言葉に

何らかの共通イメージがありますが、それのないアメリカ人にわたしが英語で説明するとなると、やはり

困ると思います。それにしても、「抗議行動」という訳語はちょっと現代的すぎません?じゃあどうすれ

ばいいのか、わたしもいい表現は浮かびませんが。

 この本を読みながら気がついたことがあります。ほとんど農業だけが基幹産業で、年貢米が武士階級を

支えることができた江戸時代初期に比べ、中期以降は、農業技術の改革が進み、農村工業が隆盛し、金融

資本の力が大きくなり、経済構造転換が進んでいました。現在は産業から情報への経済構造の転換が急速

に進んでいます。経済構造の転換で社会が動揺するとき、人々の意識は、あの時代もいまも、昔を美化し

て賛美する保守的な道徳主義に向かうということです。朱子学→古学→国学の変遷は、現在のイデオロギ

ー状況となにやら似ているようです。安倍首相は、経済は田沼意次で政治は松平定信、かな?