雪を照らす町の灯に思う

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 深夜トイレの内窓を開けて外を見る。道路も空き地も街灯に照らされて、雪に覆われた端正でりんとし

た風景が、ほの白く浮かんでいる。交通の途絶えた道の照明はムダかもしれない。だが、灯りは心を安ら

かにさせる。ふと思う、冬山の雪洞に閉じ込められて、人の気配がまったくなかったら、どんなに心細い

だろう、と。あるいは、南方の深いジャングルを一人さまよう気持ちは?

 都市化される前、厳しい自然と向き合う毎日は、人を懐かしく感じさせたにちがいない。密集してくら

すようになと、愛憎の葛藤が増え、世間が疎ましく思えることもある。それでも、圧倒的な自然の力にさ

らされて立ちすくむ経験をすれば、人のぬくもりのありがたさを思い出す。

 フィンランドにあるという、人懐こいおおらかさも、行き届いた社会保障も、極北に近い国土の長い冬

と無関係でないのかもしれない。わたしも、本州で快適な都市生活を続けていたら、地方経済の衰退を親

身に嘆くこともなかったと思う。いまは、夜の雪を照らす灯が消えたときのさびしさが分かる。