いまはナラワラが潮風を

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 野付半島の付け根に近いところには原生林が残っているようです。えびの尻尾のほうから木々が立ち枯れて、センターより先では大きな森はほとんど見えません。風化が進んだトドマツは倒れて水に沈み、その奥にあったナラの林がいまは潮風を受け止め、枯木立になっています。ナラワラです。14年前に訪れたときにはこの言葉は聞きませんでした。そういえばあの時8月の下旬でまだ夏休みだったのに、観光客はほとんどいませんでした。今回は9月に入っていたにもかかわらず、大勢の人でにぎわっています。北海道にもリピターが増え、阿寒湖や摩周・知床だけでなく、こういう荒涼とした風景にも人気が出てきたのでしょうか。それでも、ポー川史跡公園のようなすばらしい場所であまり人が来ていないところ、あるいは、地元の人でもその価値をあまり知らない素敵な場所も、まだまだありそうです。
 野付半島別海町海岸にはさまれた海域が尾岱沼(おだいとう)と呼ばれ、ホッカイシマエビを代表とする魚介類の好漁場になっています。えびの尻尾が張り出す半島側の海岸では堆積が進み、ナラワラは泥沼状の小さな水域の対岸に見られます。やがて湿原から乾いた土地へと変わって半島が太くなり、内側から新しい森が育っていくのではないでしょうか。こういう人工物が少なくて視界の広い場所に立つと、浸食・風化と堆積・陸化を繰りかえす、時間スケールの大きな地勢変動がリアルに感じられます。さまざまな規模で振動する気候が地勢を変える原動力なのかもしれません。