フィンランド・モデルは好きになれますか 12

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第一部 
 写真の一枚目は裏摩周展望台の駐車場で見かけた花(セイヨウヤブノイチゴだと思う)です。一株なのに花が色とりどりで、不思議な気がしました。二枚目と三枚目は標茶(しべちゃ)から裏摩周に行く途中の牧場風景です。  

第二部
           フィンランド・モデルは好きになれますか 12
2 フィンランド人の一生
(3) 大人への準備
 この項ではきЛ┐梁召法↓「フィンランドの奇跡」(http://home.owari.ne.jp)、も参照している。特に断っていないときはГ傍鬚辰討い襦
〔義務教育終了と進路〕
 フィンランド後期中等教育は高校と職業学校が二本の柱で、総合学校修了者の56%が高校に、35%が職業学校に進む。少数だが進学せずに職業に就くものもいる。高校希望者は大学か高等職業学校(専門大学-AMK)をめざす人だ。大学は学問や研究職、それに教職など特定の職業を目指す人が入る。数は少ないが、職業学校から大学に入る人もいる。制度はだんだん変わってきているが、高校と職業学校、大学と高等職業学校の間で移動するルートもある。何年か働いた後で大学に行く人も少なくない。
 たいていの総合学校では生徒のランク付けにつながるような形での成績評価はない。しかし最終学年は例外である。後期中等教育への進学希望が、この学年の成績評価に左右されるからだ。フィンランドでは生徒も教師も、プロセスの選択ではかなり自由裁量権が認められているが、その結果には自己責任を問われる。高校は学校によって入学難易度がちがう。すでに総合学校の段階からさまざまな職業教育が行われ(1週間の職業体験が9年生のカリキュラムに含まれていたりするー)、長い夏休みにはアルバイトをする生徒が多い。義務教育終了までに生徒自身が、自分の将来の方向について、ある程度見通しをもつようになることを期待されている。希望者の多い職業をめざすのであれば、求められる能力を身につけるのは本人の責任だ。
 本人の特性と希望にそう方向に自分を伸ばす学習機会は、公平に保障されなければならない。だから、強い動機をもち必要な学習スキルを修得した人には、義務教育以後も無償で教育が提供される。基礎教育では学習の動機を損なうようなランク付けは許されない。この段階では、動機とスキルの獲得に最も責任が大きいのは学校と教師である。授業の方法にもカリキュラム編成にも、学校や教師の裁量権は大きいが、その結果生徒が動機とスキルの獲得にどれだけ成功したかで、彼らは厳しく評価される。この段階を過ぎれば、希望する職業につながる学校に入学できるかどうかは、主として本人の責任である。総合学校の最終学年から生徒の競争が始まる。
 競争といっても、日本の「進学競争」のイメージとはちがう。成績がいいから高校で、悪いから職業学校というのではない。勉強が好きで学問や研究をしたければ大学に行き、勉強より実務に興味があれば職業学校に進むか職に就く、というのが一般の意識だ。実際、大学卒業者だから尊敬されるとか、生涯賃金で有利になるとかはないようだ。たとえば教職は、今では修士資格が条件になっているのに、給与は低い。それでも人気があるのは、夏休みが長いことと、「国民のろうそく」として尊敬されるからだ。総合学校以後は、一人ひとりの多様な価値観や人生設計に伴い、進路がばらける。日本のように、成績のいい生徒のほとんどが、地位や収入で有利な職業につながる大学をめざす、単線型の競争社会ではない。
 高校間の入学難易度の差は大学入学資格試験の成功率を反映している。テレビ局がこの試験の高校別平均点ランキングや、最上位と最下位の学校長のインタビューを放映するという。21校ある大学はすべて国立で定員は限られている。芸術系では競争率が10倍を越えたり、獣医学科では8倍に近かったりする。また大学やAMKの独自試験もあり、修得を求められる教科がちがう。そのために、大学入学資格試験で上位に来る高校や、志望校が求める教科にすぐれた高校に志願者が多くなる。進学希望者は努力の結果を問われ、高校は彼らをどれだけ効果的に支援したか責任を問われる。
 総合学校最終学年で必要なレベルに達していなかったり、どの後期中等教育の学校にも合格できなかったり、成績評価が進学したい学校にふさわしいものでなかったりしたら、総合学校にもう一年とどまることになる。彼らのために1100時間に及ぶプログラムが準備されている。この10年生は、落ちこぼれとさげすまれるのではなく、長く学んだとして尊敬される()。一律の基準で達成度が評価されるのではなく、その子に可能でまた必要な学習スキルを獲得したかどうかが判断されるようだ。この点で不十分とみなされれば、低学年から特別補助授業が提供されるし、親もそれを期待する。フィンランド国内では、達成不足の生徒への支援は手厚いが、高い能力を持つ生徒への対応が不十分だという批判があって、検討課題になっている。一部の高校は低年齢入学を認めている()。
 (この項続く)